ライフポートレートの再構成の具体的な進め方とその目的
本日は、僕たちキャリアストーリーの行うキャリアカウンセリングの手法であるライフデザインカウンセリングについて書いていきます。今日のテーマは、「ライフポートレートの再構成」です。
このキャリアカウンセリングは、計2回のセッションで行います。1回目のセッションで、キャリアストーリーインタビューを行い、2回目のセッションで相談者の人生計画を共に構成していきます。
本日は、1回目のキャリアストーリーインタビューが終了した後に、2回目のセッションまでの間に、僕たちキャリアコンサルタントは「ライフポートレートの再構成」を行います。この「ライフポートレートの再構成」についてどのような順番で、何を目的として行っていくかについて本日は記述していきます。
ライフポートレートの再構成が、ライフデザインカウンセリングの肝です。
ライフポートレートを再構成する目的
ライフポートレートとは、相談者の人生について、「筋書きを描く」ことです。つまり、「ライフポートレートを再構成する」とは、「改めて人生全体を貫く筋書きを描く」ということになります。出来事の連続に「筋書き」があると、行き当たりばったりに偶然に起こったように思われる出来事にも意味を見出せるようになります。
キャリアカウンセリングを受けに来る相談者の大抵は、なんらかの転機にいます。自分の人生においての筋書きがはっきりすると、相談者にどのような効果を及ぼすと思いますか?
筋書きがはっきりすると、自己理解が深まり、物事を見る視点が変化し、転機における問題点が明確になるのです!そうすると、転機における意思決定が行いやすくなり、行動を起こすことが促されます。これこそがライフポートレートを再構成する目的です。
それでは、続いて具体的なライフポートレートの作成手順を見ていきましょう。具体的な例として、僕自身のキャリアストーリーインタビューを結果を使用して描いていきます。(今回の具体例で使用するキャリアストーリーインタビューの内容については、過去記事①、過去記事②をご覧ください)
ライフポートレートの作成手順は、全部で7段階あります。各段階で一つの文章を作成していきます。各段階の一番初めにその段階で作成する文章の具体例を記載していきます。それでは、7つの段階を見ていきましょう。
7つのライフポートレート;捉われ
「この転機に直面して、私の根底にある心配事は、誰にも相手をされずに、孤独を感じることが怖いということだと思いだした。」
この「捉われ」についての文章は、キャリアストーリーインタビューの「幼い頃の思い出」で話された内容をもとに構成します。さて、僕の幼い頃の思い出の1つ目を見てみましょう。
よく、階段の下に隠れていたのを覚えています。僕がいなくなったら、家族がどんな反応をするかが見たかったのです。気をひきたかったのでしょう。心配してほしかったというのもあると思います。でも結局誰も僕がいないことに気づかずに、僕は飽きてそこから出たんだと思います。
幼い頃の思い出は過去から来ていますが、それを選び、意味付けしているのは、今です。つまり、過去の思い出の中に、今が反映されることになります。つまり、今の転機に直面して現在感じていることが、幼い頃の思い出の内容や語り方に表出されるということです。
また、幼い頃の思い出で1番目に語られたストーリーをもとに今回は作成しました。1つ目のストーリーが今現在において、最も懸念に感じていることを表すことが多いと考えられています。
2つ目のストーリーは、1つ目のストーリーの内容を強化したり、そこに展開を加えたものであることが多いと考えられています。そして、3つ目は、それらの懸念に対する解決策を暗に示すことが多いとされています。
このパターンを念頭に、僕の例を見ていきましょう。1つ目で「誰にも相手にされないことに対する怖れ」が浮かびあがりました。2つ目では、「人とのつながりを求める気持ちがその原因となっていること」がわかります。そして、3つ目では、「困難に挑戦すること」というのが、浮かびあがってきています。
常にこのパターンが当てはまるわけではありませんが、3つの幼い頃の思い出のそれぞれに対する考察をする際に参考となる視点です。
7つのライフポートレート;自己の中核となる概念
「私は、正義感が強く、困難があってもあきらめません。そして、強く頼もしい存在です。」
次にキャリアストーリーインタビューでのロールモデルを用いて、相談者の自己概念を描いていきます。ロールモデルは、相談者自身の自己が投影されます。自分がどういう人間か(どういう人間でいたいか)についての表れです。
7つのライフポートレート;問題を解決につなぐ
「私は、成長期の問題を解決するために、誰にも相手にされない怖れの感情を、困難があってもあきらめずに挑むという感情に変化させた。」
ロールモデルは、問題の解決策を教えてくれます。幼い頃の思い出に浮かびあがってきた転機における相談者の捉われを克服するための何かを見出すために、ロールモデルの特徴とリンクさせます。
これにより、受動的な捉われから、能動的に行動できるものに変化させます。それにより、転機での問題点に対する相談者の捉え方が変化します。
7つのライフポートレート;どういう場に身を置きたいか
「私が興味を持つのは、何かに挑戦しようとしている人たちが、困難な状況にあるときに、その状況を劇的に変化させるような問題解決にかかわり、成功につなげていくことです。コーチ、モチベーター、トレーナーそしてコンサルタントに興味を持っています。」
次に、キャリアストーリーインタビューでの雑誌・テレビ番組・ウエブサイトに関する質問の答えをもとに、どのような対象に興味を持っているかを明らかにしていきます。
この興味の対象は、自分が仕事をするうえでどういう環境に身を置きたいかという志向性につながります。
7つのライフポートレート;台本を描く
「もし私が大好きなストーリーから台本を作るなら、私は困難な状況でも地道に努力し続けることでその先の希望を見出すでしょう」
キャリアストーリーインタビューにおける大好きなストーリーの質問の答えから、相談者の人生の台本を描きます。この台本は、相談者が未来に向けて一歩踏み出す時にどうしたら良いかを明確に示します。
7つのライフポートレート;自分へのアドバイス
「今自分のために持っている最良のアドバイスは、自分の行動に責任を持てである。」
キャリアストーリーインタビューにおける好みの名言や格言は、あなたに対するアドバイスになります。何よりも、これはあなたに響いている言葉なので、それをアドバイスとして受け入れることはたやすいはずです。
7つのライフポートレート;統合
「この転機に直面して、私の根底にある心配事は、誰にも相手にされずに、孤独を感じることが怖いということだと思いだした。私は、成長期の問題を解決するために、誰にも相手にされない怖れの感情を、困難があってもあきらめずに挑むという感情に変化させた。この特性は、私が次の職場に移動する際に大切なものだ。私は、正義感が強く、困難があってもあきらめないのだ。そして、強く頼もしい存在だ。私が興味を持つのは、何かに挑戦しようとしている人たちが、困難な状況にあるときに、その状況を劇的に変化させるような問題解決にかかわり、成功につなげていくこと。コーチ、モチベーター、トレーナーそしてコンサルタントに興味を持っている。私は困難な状況でも地道に努力し続けることでその先の希望を見出す。自分に対するアドバイスは、自分の行動に責任を持てである。」
最期に、これまでの内容を統合して、一つの筋書きを描きます。相談者のキャリアカウンセリングに来た目的を達成するのに役立つものではないといけません。そうであるかを確認しながら作成していきます。(今回は転職の相談に来たという設定で作っていいます)
一貫した筋書きが内在しているかにも注意が必要です。この事例の場合、困難な状況にあっても、あきらめずに、地道に努力し続けるというテーマがあります。こういうのが明確に示されているかどうかが大切です。
最期に
本日は、ライフポートレートの再構成の具体的な手順を見てきました。ここまでくると当初のライフポートレートの再構成の目的が達成されていると思いませんか?
「自己理解が深まり、物事を見る視点が変化し、転機における問題点が明確になり、転機における意思決定が行いやすくなり、行動を起こすことが促される」という目的です。
しかし、これはキャリアコンサルタントが1回目のセッションの結果をもとに作成したもので、相談者とともに作成したものではありません。
2回目のセッションでこれを使用し、相談者と一緒に相談者の人生計画を立てていきます。2回目のセッションについてはまた後日記事を作成いたします。